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できれば映画に浸っていたい。。

鑑賞した映画のレビューや解説を勝手気ままに書いていきます。

時間を超越したコミュニケーションについて。〜映画「ひそひそ星」& 「すれ違いのダイアリーズ」〜

映画 恋愛 ノスタルジー

「ひそひそ星」(2015年)

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【あらすじ】

かなり先の未来、人類は多くの失敗(災害や戦争と思われる)を繰り返し、人口は激減。宇宙には平和が訪れているが、人口(?)の80%を占めるAI搭載ロボットが世界を支配している。(面白いのは、このロボットたちは決して20%の人間たちを虐げてはいない点。)

主人公は”鈴木洋子”を名乗るAI搭載のアンドロイド。彼女は、宇宙の様々な惑星に散り散りになって住んでいるわずかな”人々”の間を行き来しながら、(荷主や受け取り人にとって)思い出に満ちた荷物を送り届ける宇宙宅配便の”配達人”。

 

テレポーテーションの技術により荷物など瞬時に移動できるこの時代に、何故、人類は時間をかけて荷物の宅配を依頼するのか?鈴木洋子は、理解ができない。きっと”距離と時間に対する憧れは、人間にとって心臓のときめきのようなものだろう”と推察しているのだが。

 

ある時、鈴木洋子は”30dB以上の音を立てると人類は死んでしまう”という”ひそひそ星”を訪れる。彼女は影絵のように障子に映し出されたシルエットのような”人々”の暮らしの間を歩きつつ、受け取り人のいる場所へ向かっていく。。

 

【みどころ】

テーマは「記憶」。もっと踏み込んで言ってしまえば「喪失感を伴う記憶」=「郷愁」とも言えるだろう。
万人の心に響く可能性の高いテーマだが。。
意外と暗喩的に物語に仕込むのは難しくもあるのではなかろうか。

 

その記憶とは一体”何”なのか、”誰”がそれを失ったのか、これらは物語の語り手側が明示しないと、観る側の感動を呼ぶにいたらないのでは。本作では、残念ながら失った主体が”人類”という大きな括りの為か、それが感じられなかった。

 

とはいえ、目に映る画像は美しい。ジャンルとしてはSFの体をとっているのだが、主人公が訪れる惑星の風景(福島の被災地にてロケ)や宇宙船などのプロダクトデザインなど、観ていて飽きない。特に風景の映像については、間違いなくタルコフスキーの影響を受けているのだろう。

映画『ひそひそ星』予告編

 

モノクロ画面も高精細なためか、古ぼけた印象がなく、映像ひとつひとつがアート写真のように映えていた。
また、園監督が少年時代だったであろう昭和40年代前半頃のモノや風景が、デザイン含め映像のいたるところに溶け込んでいるような印象も。

 

さらに、”鈴木洋子”と言うキラキラ感の全くない名を名乗る(笑)、アンドロイドの主人公設定自体がなんとも興味深くもある。彼女は”宅配”を望む人間の気持ちが”解らない”と感じる時点で、もう既に”理屈では説明できない”人間の感情に憧れているのだろう。きっと、”距離と時間に対する憧れ”とはまさに、機械たる彼女に芽生えた”初めての感情”と言えるのではないだろうか。

 

 数々のメジャー作品を手がけながら、自主制作の形をとって、こういうコダワリの企画を世に出していく園子温の意欲は凄い。

オーダーに基づいた職人仕事をこなす一方で、今一番、日本で好きなことができる監督なのかも知れない。

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「すれ違いのダイアリーズ」(2014年)

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【あらすじ】

教員免許を取ったものの、なかなか教職に就けない主人公の青年”ソーン”。

必死の就活が功を奏したのか、やっとみつけた教師の仕事は僻地の水上学校へのたった1人での赴任だった。

 

不便な暮らしに苦労しながらも、奮闘するソーン。ただ、子供たちの気持ちに寄り添う余裕が持てないせいか、反発を受けたりと、なかなかいい関係性が築けない。

途方に暮れていたソーンだが、ある日たまたま手を伸ばした黒板の上に、少し古びたノートがあるのを見つける。

 

それは一年前に、自分と同じように赴任してきた若き女教師の日記帳だった。

そこには、自分と同じように壁にぶつかり苦しみながらも、成長していく彼女の活き活きとした姿が映し出されていた。

そんな日記を読みふけるうちに、ソーンは未だ会ったこともない彼女に”恋心”を抱くようになるが。。

  

【みどころ】

タイムマシンも出てこない、それ以前に、SFでもなければファンタジーですらないのに、時間を超えて男女がコミュニケーションを取り、恋に落ちてしまうという斬新なアイデア!しかも”水上学校”が舞台という、タイならではのオリジナリティ。やるね。

 

さらには途中で、”現在進行形”で描かれる側の主体が入れ替わるという巧みな構成。ヤバい。
中盤、ややご都合主義にみえてしまう展開もあるが、クライマックスの捻りが”技あり!”で帳消し(笑。
オマケに学園モノとしても、ちょっぴり泣けるシーンがあって、サービス精神満載の内容かと。


『すれ違いのダイアリーズ』予告編

 

主人公を演じるふたりも魅力的。
特に青年教師ソーン役のスクリット・ウィセートケーオ(本職は歌手らしい)。その”キュッ”っと上がった口角から繰り出される笑顔に(香取慎吾 似)、本作を観た全アジア女子は心を奪われるのでは??

「ラブアクチュアリー」を観て以来、”ラブコメ”映画ジャンキーになり果てた(笑)私が、自信をもってお勧めする一本!!

 

※↓出演しているネット番組でも本作を紹介させていただきました!


【映画情報】「ひそひそ星」「すれ違いのダイアリーズ」〜広尾のごきげん空模様 #60〜

 

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