できれば映画に浸っていたい。。

鑑賞した映画のレビューや解説を勝手気ままに書いていきます。

罪悪感なき者への深き怨恨(1) 映画『ザ・ギフト』について


広尾のシネマ☆JACK#6

※動画はネタバレなしです!

 

そのジャンルに関わらず、”贖罪(しょくざい)”がテーマとなっている映画は実に多い。それは言語や文化的な背景の如何に関わらず、世界中のあらゆる人間の価値観や言動に影響を及ぼす共通の”意識”と言えるからではないだろうか。

それだけ人は(それが”法”に触れるか否かは別にして)、過去の自らの言動や行動に何らかの”罪悪感”を感じているものなのだろう。

 

 しょくざい

【贖罪】
犠牲や代償を捧げて罪をあがなうこと。特にキリスト教で、キリストが十字架上の死によって、全人類を神に対する罪の状態からあがなった行為。 

<※google辞書より>

 

とりわけ、

<自分が全く自覚をしないまま、他人に対して多大な心理的・物理的損害を及ぼすような”罪”を犯していた。そして、その被害者は決してそのことを忘れていない、、、>

などというシチュエーションは、多少なりとも”贖罪”の意識を持つ人間に対して、この上ない恐怖を与えるに違いない。

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ザ・ギフト』(2015年)

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【あらすじ】

順調にキャリアを重ね、子供には未だ恵まれぬものの”経済的な豊かさ”を手に入れた夫婦。夫のさらなるキャリアアップを伴う転職で、彼らは転居先での新生活をスタートさせる。そして、そこは夫<サイモン>が育った故郷の街でもあった。

 

理想的な邸宅を手に入れた夫婦は、生活雑貨の買い出しのため訪れたショップで、たまたまサイモンの高校時代の同級生<ゴート>と出会う。25年ぶりの再会を喜びつつも、先を急ぐ夫婦はゴートに自宅の連絡先を渡して、その場を去った。

 

ある日、自宅前にゴートからの転居祝いを兼ねた”贈り物”として一本のワインが置かれていた。最初は素直に喜ぶ夫婦だったが、彼からの”贈り物”はその後も続いた。次第にその内容もエスカレートしていき、夫婦は困惑し始めるのだが。。

 

【感想・解説】

<ストーリーについて>

※半ネタバレ注意!ただし、これ読んでも映画は楽しめると思いますが(笑)

こういう、”贈り物”系スリラーは数多くあるため、如何に”捻るか”が作る側の腕の見せ所なのだろう。裏返せば、多くのネタが出尽くした感がある為、結構”レッドオーシャン”的な分野ではなかろうか。

そういう意味では、本作は隙間のピンポイントを突いた力作だと言える。その結末(つまり、この物語の有り様)は、予測ができなかったし、ホラー映画ばりのビックリ箱的な”怖がらせ”が散りばめられていて、映画の進行を見届けるのが、恐ろしくなってくるような展開をみせる。 

 

また物語設定の面においても、”ギフト”の贈り主が、その素性も含めて序盤からハッキリしている点が面白い。さらには、彼は決してサイコパスではないという点も。その仕込んだ罠が巧妙であればあるほど、彼の”頭脳的な資質”も相まって、その哀しみと怨恨の深さが浮き彫りになるというストーリー構造を為している。
結果的に、あえて物語設定の前提条件を絞り込んで臨んだことが、本作の勝因のひとつだと言えるのではないだろうか。

 

あえてツッコミを入れるとするなら、”イカれた輩”が複数いて、彼らがお互いに敵対している場合、恐怖も相殺されてしまうのでは、という点。言い換えれば、それが本作の”ホラー”ではない所以と言えるのかも。

ラスト、主人公を打ちのめしたのは赤ん坊の目ではない。もはや、父親など誰でもよいかのような空気を醸す妻<ロビン>の強い眼差しなのだ。
結局、しょうもないオトコどもを”消去”して、幼子とふたり再出発を図るシングルマザーの背中を押す物語だとしたら、(特に欧米では)多くのキャリア・ウーマンの共感を得る一作なのかも知れない。

 

<スタッフ、キャストについて>

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夫・サイモンの同窓生ゴートを演じるジョエル・エドガートンによる監督デビュー作。脚本も彼自身の執筆による渾身の一作といえる。

サイモン役は、ジェイソン・ベイトマン。映画監督の父と女優の姉を持つ。近作はコメディ映画への出演が多く、ディズニー・アニメズートピアではキツネのニック・ワイルド役で声の出演をしている。

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妻のロビン役はウッディ・アレン監督それでも恋するバルセロナで知的ながらも禁断の恋に落ちてしまう主人公を演じたレベッカ・ホール。彼女独特の知性を醸すセクシーさが、自身のキャリアを犠牲にしてきた妻ロビンの、”どこか抑圧された感情”を表現していて素晴らしい。

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