できれば映画に浸っていたい。。

鑑賞した映画のレビューや解説を勝手気ままに書いていきます。

若者たちのおバカな日々を描く群像劇。映画「エブリバディ・ウォンツ・サム!!」と「アニマル・ハウス」について

「エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に」(2016年)

【あらすじ】

1980年9月、アメリカのとある州立大学に”野球”入学する主人公”ケヴィン”は、新学期のスタートする3日と15時間前に野球部員が共同生活する”ハウス”に入居する。

そこで彼が見たものは、メジャーリーグからも注目される名門チームのメンバーとは思えないほどハチャメチャな日々を送る先輩たちだった。。

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映画「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」ショートレビュー

【感想・みどころ】

ひとつのシリーズ、あるいは、ひとつの作品を長年にわたって撮るのが趣味(?)の、ど変態監督、われらがリチャード・リンクレイターの最新作(笑)。
ある大学の名門野球部の新入生が主人公。この映画は同監督の前作とうって変わって、主人公の入寮から新学期を迎えるまでの”3日と15時間だけ”を描いている。


とにかく、諸先輩はじめこの野球部の面々のバカっぷりが突き抜けている(笑)。冷静にみれば、メジャーからのスカウトを期待するような一流チームが”こんなわけ”ない筈(笑)だが、なぜか、荒唐無稽さは感じられれず、なかなかリアルな青春群像劇に見えてくるのだから不思議だ。
きっと、ひとりひとりのキャラが丁寧に設定されていて、こんなやつ”いるいる”感がしっかりと湧き出ているからなのだろう。
ほんとこんなハチャメチャなヤツ、社会に出たら一体どうなるのだろうかと少々心配していた友人が、意外や大企業の要職に就いていたりとか、近い経験をした人も少なからずいるのではないだろうか。

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そんな仄かなリアル感が、この終始バカっぷり満載な”はずの”映画鑑賞後に、なんとも言えない切ない余韻を残してくれる。それは観るものの多くが、自分の青春時代の想い出の”どこかほろ苦い部分”とオーバーラップしてくるからではないだろうか。

 

音楽面でも(特に)ミドルエイジ以上の観客にとっては、胸にグッとくるような楽曲のオンパレードで楽しめる。その辺はちょっと「スクール・オブ・ロック」の匂いも感じるような。本作を観ると、当時のオトコどもにとっては”ヴァン・ヘイレン”って、もろミーハー系アイドル音楽の位置づけだったってことが解る。ところが観てる私にとっては、”泥レス”シーンでかかるヴァン・ヘイレンが一番音楽的にアガってしまったという小っ恥ずかしさ(笑)。

 

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また、主人公とガールフレンドが徐々に親密になっていくシーンでは、この世代特有の理屈っぽいロマンティシズムに満ちた会話の応酬が描かれる(笑)。それはまるで「ビフォア・サンライズ」におけるイーサン・ホークとジュリー・テルピーを彷彿とさせる佇まいなのだ。

そうそう、主人公演じるブレイク・ジェナーって、イーサン・ホークと「6才のボクが〜」主演のエラー・コルトレーン双方と同じ匂いを感じるのは私だけだろうか。ガールフレンド役のゾーイ・ドゥイッチジュリー・デルピーっぽいし(笑)。


ここで、ある想いがリンクレイター・ファンである私の頭をよぎる。もしかしてこの映画は、長年にわたる大河ヒューマンドラマ・シリーズの序章に過ぎないのではないかと(笑)。

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エブリバディ・ウォンツ・サム! !  世界はボクらの手の中に

エブリバディ・ウォンツ・サム! ! 世界はボクらの手の中に

 

 

「アニマル・ハウス」(1978年)


映画「アニマル・ハウス」ショートレビュー

【あらすじ】

時は1962年、舞台はアメリカ北東部にある架空の私立大学”フェーバー大学”。新入生のラリーとケントは新人勧誘を目的としたパーティ真っ最中のサークル”オメガクラブ

”のハウス(寮)を訪れる。ところが、家柄や学業成績などエリートとしての資質が明らかな学生にしか興味のないクラブに爪弾きにされてしまう。

仕方なく、既に同校を卒業したケントの兄の古巣という”デルタクラブ”のパーティに出向く。そこはビール瓶が飛び交い、”ブルート(ジョン・ベルーシ)はじめ”粗暴でハチャメチャな先輩がひしめく”問題学生”の巣窟だった。。。f:id:vegamacjp:20161113212004j:plain

【感想・みどころ】

全米で人気のコメディショー「サタデイ・ナイト・ライブ」。その番組でブレイクしたコメディアン、ジョン・ベルーシの、日本における劇場用映画デビュー作。彼は、のちにダン・エイクロイドと共演した「ブルース・ブラザーズ」やスティーブン・スピルバーグ初期の戦争コメディ「1941」での活躍で、一躍スターダムにのし上がった。

 

もうおバカ加減が半端ない”デルタクラブ”を象徴するハチャメチャ学生”ブルート”を演じるのが、このジョン・ベルーシ。あのニコリともせず”もろ”毒を孕んだ独特のキャラで観客を爆笑させられるのは、後にも先にも彼だけだろう。この毒キャラ中心に独特のドタバタ感を醸すコメディ映画としての基礎は、監督ジョン・ランディスの次作「ブルースブラザーズ」において見事に踏襲されている。

 

しかしブルートは、本作に於けるギャク要素を一手に牽引する役割を担うものの、物語上では決して主人公とは言い難い。(タイトルバックのクレジット上では主演扱い)

物語上の主人公は、新入生の片割れ”ラリー”。彼はちょっとしたオトボケキャラではあるものの、並み居る先輩たち(笑)の間においては、意外にマトモなほう。このラリーと前述したブルートの関係性は、面白いことに赤塚不二夫の「天才バカボン」に於ける”バカボン”と”バカボンのパパ”のそれと相似形を成す。<ちょっと薄めな小ボケキャラ>と<毒に満ちた”危ない”過激キャラ>とのコンビネーションが、どこかシニカルな笑いを誘うようなハイブリッドな物語構造を成しているのだ。

 

本作のもう一つの”みどころ”は、今となっては意外に豪華な出演者の顔ぶれ。ジョン・ベルーシは冒頭に書いたとおりだし、物語上の主人公”ラリー”を演じるトム・ハルスは本作出演後にアカデミー作品賞受賞作アマデウス主人公モーツァルトに抜擢されている。

また、ラリーの先輩の彼女でデルタクラブの紅一点”ケイティ”を演じたカレン・アレンは、後にインディ・ジョーンズ・シリーズにおいてハリソン・フォード演じる主人公の相手役(準主役)で2作品に出演している。

そして、ケイティといい関係になってしまう奔放な大学教授”デイブ”を演じるドナルド・サザーランドは、後にロバート・レッドフォードの初監督作「普通の人々」で主演している。さらには、後にフットルースで主演したケヴィン・ベーコンも端役で本作に出演しているのだ。

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