映画「LOVE【3D】」に観る、”愛しさ”と”切なさ”
「LOVE【3D】」(2015年)
【あらすじ】
主人公”マーフィー”は、妻の”オミ”と未だ幼い息子との三人暮らし。
オミが息子の面倒に明け暮れる日々のためか、夫婦間に流れる倦怠感がマーフィーの心に暗い影を落としている。
元旦の朝、マーフィーは昨夜の”クスリ”の余韻が未だ残る最低な気分で目醒める。
そこへ、元カノ”エレクトラ”の母親から、一本の電話が。
エレクトラが失踪してしまったらしい。
彼女と連絡が取れなくなった母親は、半ば取り乱して元カレであるマーフィーに連絡をよこしたのだ。
この電話をきっかけに、マーフィーはエレクトラとの激しい愛欲に満ちた日々を回想し始めるのだった。。
映画 LOVE 【3D】 ギャスパー・ノエ監督最新作 4月1日(金)公開!
【みどころ】
全体の7割〜8割が濃厚なベッドシーン。かなりエロい(笑)。
はっきり言ってポルノなのだが、
全編にわたって深い哀切感に満ち溢れた恋愛映画でもある。
特に3人の絡みのところが印象的。
エロいながらも、バックで流れるギターソロの情感が溢れてて、、
ここを味わえば味わうほど、マーフィーの激しい”喪失感”、”絶望感”に感情移入できる。(※ギターソロはFunkadelicの”Maggot Brain” )
劇場公開時は3Dだったこともあり、ふたりがお互いを求め合うサマが”強烈な臨場感”をもって観る者の脳髄に飛び込んでくる。
これは、主人公の痛々しい”欠落感”や”失望感”を一緒に体感する映画。
もはや、私にとっては泣ける一本だ。
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アイルランド映画における若者たち。
「ブルックリン」(2015年)
この映画も、先ずは映像が印象的。40年代〜50年代の”アメリカ製ポスター”から飛び出して来たかのような、パステル調でクラシカルな色彩。衣装も含め、緑と赤を強調した色合いが「アメリ」とかを彷彿とさせる。
内容の方は、、ピュアピュアなラブストーリーとして魅せる展開から始まる。祖国アイルランドでは、なかなか”チャンス”を見出せない主人公エイリッシュ。そんな彼女の”アメリカ行き”をセッティングしてくれた姉との愛。そしてニューヨークで出逢ったイタリア系青年との恋愛。。
特に前半の流れの中では、女子寮での”人間関係”の描写が素晴らしい。エイリッシュが次第に、アメリカ生活に溶け込み、ステップアップしていく様子を推し量る”尺度”となっている。
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ところが後半、物語はそう単純には進行しない。。ワケあって主人公がアイルランドに一時帰国するあたりから雲行きがあやしく。
さぁここで、満を持して登場のドーナル・グリーソン。彼の持ち味たる”ハニカミ笑顔”が、ここまで大事にしていた”魔法”を粉々に打ち砕く破壊力をみせるとは(笑)。
元々、物語の”背徳”的な展開は大好物のクセに、もう前半で”ピュアピュアな魔法”にかかってしまってる自分は「あ、あかんて!そっちいったら!」と心の中で主人公にツッコミ入れてしまう始末(笑)。
たぶん、女子なら号泣必至の終盤。(自分含め)多くの男性にとっては、ここでの主人公の心情を理解するのは難しいだろう。(まぁさすがに、エリック・ロメールが生きてたら、彼は理解したでしょうが 笑)
そういう意味で、カップルが映画デートにチョイスするには微妙な一本(いや、マジで)。お一人様か、同性のお友達と一緒に鑑賞するのが無難かと。
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「シング・ストリート 未来へのうた」(2016年)
あまずっぱぁ〜!
もう年代的にドンピシャすぎて、もはや客観的にはこの映画を論じることなどできない(笑)。
いきなり”リオ♫”だしね。ハマりましたよ。そんで、部屋で”マン・イーター”流して踊るとか。もう”ありえ過ぎて”ヤバい(笑)。
兄貴のキャラも素晴らしい。しかしモデルがいなければ、なかなかああいうリアルなキャラは作れないのでは。監督のジョン・カーニーには、お兄さんがいるのだろうか?
あと、キャラ的に立ってたのは、マネージャー役の子。とにかく顔がイイ。イケメンではないが味がある。矯正ワイヤーで締め上げた歯ゆえにか(?)、ちゃんと閉じれない口がチャームポイント(笑)。関西に住んだことがない人には解ってもらえないかもだが、「ケンミンの焼きビーフン」のCMに出たら必ずやハマるであろう佇まいなのだ(笑)。
主人公のボクもなかなかのイケメン。”息子にしてよし”、”弟にしてよし”、”彼氏にしてよし”、の”三方よし”で(笑)、ほぼ全世代の女子の支持を得るだろう。
また、「小さな恋のメロディ・青春編(笑)」とも言うべき、物語の締め方も好印象な一本。
最後に、、
ドンピシャ世代(昭和40年代生まれくらい)の皆さま限定で、この映画の正しい(?)観方をご提案します。
1回目: 映画館で恥ずかしそうにニヤニヤして観る。
2回目: DVDが出たら、ひとり号泣しながら観る。
3回目: 同世代の気のおけない友達と酒飲みながら、ワイワイ観る。
- アーティスト: サントラ,Score,ジョン・カーニー,グレン・ハンサード,アダム・レヴィーン,カール・パペンファス,ケン・パペンファス,ザモ・リッフマン
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生き様にこだわるオトコたち、その明暗。。「スティーヴ・マックィーン その男とル・マン」&「海よりもまだ深く」
「スティーヴ・マックィーン その男とル・マン」(2015年)
往年の大アクション・スター、スティーブ・マックィーン入魂の一作「栄光のル・マン」制作にまつわるエピソードをとおして、彼の半生を追ったドキュメント。
この作品は、カーレースに魅了された”彼自身の思い入れ”が強いあまり、それまでの成功物語に水を差すような大きな挫折をもたらした。
マックィーンは、とにかくカー・レースそのものを、レーサー目線でリアルに表現する映画を作りたかったらしい。
今なら、ドラマ部分を排してレースのリアリズムをひたすら追求する映画の制作も(当時ほどの難はなく)実現しただろう。マックィーン並のビッグネームがあるならば。
ただ当時はそうはいかなかった。おそらく、(恋愛とか、ヒューマンドラマありき、みたいな)強固なハリウッド・スタイルが、彼の行く手を阻んだのでは。
また、破天荒で一本気な性格も災いしたのかも知れない。そういえば、ブルース・リーにも相通じるような。。(ちなみにマックィーンはリーの弟子だったらしい 笑)
ともあれ、映画は完成し公開された。どれほど自分で満足できるものだったかは判らないが。。終盤には、マックィーンの人情味溢れるエピソードも紹介され、涙を誘う。
彼がいかにカーレースを愛し、レーサーをリスペクトしていたかを感じることができる一本。
「海よりもまだ深く」(2016年)
一本の映画の中に出てくる、”笑い”の頻度だけで言えば、この映画は間違いなく”コメディ”のレベル。それくらい笑った。でも、どう考えても”コメディ”ではない。
なぜだろうか?
きっと、それらの”笑い”がリアルな日常の”可笑しさ”をそのまま切り出して見せてくれているからだろう。まるで、とてつもなく手のかかる面倒くさい作業を経て、我々の生活を編集し直したんじゃないかってくらいの印象。
さらには、制作者の描かんとするテーマが、極めてビターでリアルな人生についてだから、なのかも知れない。
終盤、樹木希林演じる老年の未亡人と、阿部寛演じるうだつのあがらない中年、それぞれが自分の子に発する決め台詞がある。
実は、この二つのセリフのベースにある価値観は”真逆”。それらを両立させて生きていくのは到底不可能なのだ。
この映画が素敵なのは、単視眼的な価値観に依っていない点。但し少なくとも、どちらを拾い、どちらを捨てたのか、自覚することの大切さを説いてるのではないだろうか。
自分の人生を悔いたり、他人のせいにしたりしなくてすむように。
悲しい涙とうれしい涙は、それぞれ味が違うらしい。本作を鑑賞して溢れる涙は、一体どんな味がするのだろうか。
※↓出演しているネット番組でも本作を紹介させていただきました!
【映画情報】「スティーヴ・マックイーン その男とル・マン」「海よりもまだ深く」〜広尾のごきげん空模様 #61〜
知らない、ふたり(2016年)
この映画の登場人物って、みんな少しずつ変わり者(笑。
その人間的ズレみたいなのが独特のユーモアやリアリティを醸してるような。
特に青柳文子演じる小風の”気持ち悪くない変人ぶり”が印象的。
片想いの連鎖のような、ちょっと風変わりな恋愛感情の機微を軸に物語は進む。
一見、群像劇のようで、でもやはり”ふたり”の物語なのだ。
監督・脚本は「こっぴどい猫」(第12回トランシルヴァニア国際映画祭 で最優秀監督賞受賞)、「サッドティー」などでメガホンをとった日本映画界の若手ホープ、今泉力哉氏。
※出演しているネット番組でも本作を紹介させていただきました!
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【映画情報】「知らない、ふたり」「ヘイトフル・エイト」〜広尾のごきげん空模様 #75〜