できれば映画に浸っていたい。。

鑑賞した映画のレビューや解説を勝手気ままに書いていきます。

2016-01-01から1年間の記事一覧

JAZZにまつわる”ひたむきさ”と”狂気” / 映画『ブルーに生まれついて』レビュー

『ブルーに生まれついて』(2015年) 監督/脚本/製作: ロバート・バドロー 出演: イーサン・ホーク カルメン・イジョゴ カラム・キース・レニー 製作国:アメリカ、カナダ、イギリス 【ストーリーについて】 実在した名ジャズ・トランペッターでありヴォー…

ウディ・アレン初期の名作たち。映画『アニー・ホール』と『マンハッタン』について。

『アニー・ホール』(1977年) 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン&マーシャル・ブリックマン 出演:ウディ・アレン ダイアン・キートン ウディ・アレン初期の名作①映画「アニー・ホール」レビュー ※ネタバレ 【あらすじ】※ネタバレあり 主人公アル…

【番外妄想編】映画と感情移入について。

1. 客観的に自分を見るということ 正直言うと、自分を客観視することにあまり興味がなかった。人間が(自分含め)物事を客観視することなど、到底無理だろうと考えていたからだ。 じゃ、何故「客観的に〜」などと言う見出しで今回のブログを書き出したのか。…

驚愕のド直球。映画『pk』について

映画『pk』について。広尾のシネマ☆JACK#8 『pk』(2014年) 監督:ラージクマール・ヒラーニ 脚本:アビジャート・ジョーシー ラージクマール・ヒラーニ 製作:ビドゥ・ビノード・チョープラー ラージクマール・ヒラーニ 製作国:インド 配給:REGENTS 国内…

激しい喪失感との対話。映画『退屈な日々にさようならを』について

『退屈な日々にさようならを』(2016年) 監督・脚本・編集:今泉力哉 プロデューサー:市橋浩治 配給:ENBUゼミナール 映画『退屈な日々にさようならを』予告編 第12回トランシルヴァニア映画祭(2013年)にて、最優秀監督賞を受賞(「こっぴどい猫」)した…

罪悪感なき者への深き怨恨(2) 映画『手紙は憶えている』について ※ネタバレなし

『手紙は憶えている』(2015年) 【あらすじ】 90歳のゼヴはユダヤ系アメリカ人。今は介護老人ホームで静かに暮らしている。 彼は数日前に妻ルースを亡くしながらも、一晩たつと彼女の死すら忘れてしまうほど記憶力が衰えていた。 ある日ゼブは、同じホーム…

罪悪感なき者への深き怨恨(1) 映画『ザ・ギフト』について

広尾のシネマ☆JACK#6 ※動画はネタバレなしです! そのジャンルに関わらず、”贖罪(しょくざい)”がテーマとなっている映画は実に多い。それは言語や文化的な背景の如何に関わらず、世界中のあらゆる人間の価値観や言動に影響を及ぼす共通の”意識”と言えるか…

若者たちのおバカな日々を描く群像劇。映画「エブリバディ・ウォンツ・サム!!」と「アニマル・ハウス」について

「エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に」(2016年) 【あらすじ】 1980年9月、アメリカのとある州立大学に”野球”入学する主人公”ケヴィン”は、新学期のスタートする3日と15時間前に野球部員が共同生活する”ハウス”に入居する。 そこで彼…

世界中が求める究極の”お母ちゃん”像。映画「湯を沸かすほどの熱い愛」について

「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年) 監督・脚本:中野量太 主演:宮沢りえ 配給:クロックワークス 映画「湯を沸かすほどの熱い愛」ショートレビュー 【あらすじ】 主人公は、幸野家が営む銭湯「幸の湯」のオカミ<双葉(ふたば)>。1年前に亭主<一浩>…

失くして初めて気づく想い。 映画「シェルタリング・スカイ」と「永い言い訳」について

「シェルタリング・スカイ」(1990年) 監督:ベルナルド・ベルトルッチ 脚本:ポール・ボウルズ(原作者) ベルナルド・ベルトルッチ マーク・ペプロー 撮影:ヴィットリオ・ストラーロ 音楽:坂本龍一 【あらすじ】 結婚して10年になるポート(夫)とキッ…

映画「ダゲレオタイプの女」と「イレブン・ミニッツ」 最近作にみる、論理的”技法”で魅せる映画たち。

「ダゲレオタイプの女」(2016年) 【あらすじ】 舞台は”現代の”パリ郊外、再開発計画エリアにある街。 主人公の青年”ジャン”は就職難の中、比較的待遇の良い「写真家”ステファン”の助手」に応募し、アッサリと採用される。 写真家”ステファン”はフランス発…

独断と偏見に満ちた「2001年宇宙の旅」解釈論 ※ネタバレ注意

「2001年宇宙の旅」(1968年) 【ストーリーについて】 まず、この物語は神=創造主の”正体”に対する科学的なアプローチを主題としている。(スピリチャルな切り口は敢えて排している。)モノリスは究極の人工物であり、コンピュータとか人工知能みたいなも…

映画にみる、出逢いと人生。「ベストセラー」と「レッドタートル」について。

【映画情報】広尾のシネマ☆JACK#1 「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」(2016年) 【あらすじ】 1920年代、ヘミングウェイやフィッツジェラルドなどアメリカ文学を代表する著作を手掛けた名編集者マックスウェル・パーキンズ(以下、マックス)と彼に…

いかにも”嘘っぱち”だが、どこかリアルで魅力的な映画たち。

ふきげんな過去(2016年) 【あらすじ】 つまらない日常に辟易し、なんとなく毎日を過ごす女子高生・果子(二階堂ふみ)が主人公。彼女はエジプト風豆料理屋「蓮月庵」を営む祖母サチ(梅沢昌代)、母サトエ(兵藤公美)、無職(?)の父タイチと共に暮らし…

意外と硬派で深い、、福山雅治主演の新作映画。

「SCOOP!」(2016年) 【映画情報】「SCOOP!」〜広尾のごきげん空模様#80〜 【あらすじ】 ある出版社の雑誌(写真週刊誌)「SCOOP!」の編集部が物語の舞台。 主人公はフリーカメラマン”都城 静(みやこのじょう しずか)”。ミドルエイジのちょいワル(?)…

一過性の恋に翻弄される若者たち。〜映画「エクス・マキナ」&「教授のおかしな妄想殺人」〜

「エクス・マキナ」(2015年) 【あらすじ】 主人公ケイレブは、世界有数のWEB検索システム会社”ブルーブック”(Googleがモデルと思われ)に勤める有能なプログラマー。 ある日ケイレブは社内抽選に当たり、CEOのネイサン宅に招待される。 ここで社長とマン…

微笑ましくも何だか切ない。。過ぎ去りし日の青春物語。〜映画「グッバイ、サマー」〜

「グッバイ、サマー」(2015年) 【映画情報】「グッバイ、サマー」〜広尾のごきげん空模様#79〜 【あらすじ】 14歳の少年ふたりが繰り広げるひと夏の冒険(?)物語。 女の子のような容姿(言いかえれば美少年といえるのでは?服装はいたって男の子)で、ク…

人は妖精たち(自然)と宴を共にできるか? 〜映画「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」〜

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」(2014年) アイルランド伝説に登場する想像上の生物”セルキー”を母親に、普通の人間を父親にもつ兄妹の物語。セルキーは海の中ではアザラシ、陸上では人間の姿をしている妖精の一種らしい。そして、この物語は多くの妖…

時間を超越したコミュニケーションについて。〜映画「ひそひそ星」& 「すれ違いのダイアリーズ」〜

「ひそひそ星」(2015年) 【あらすじ】 かなり先の未来、人類は多くの失敗(災害や戦争と思われる)を繰り返し、人口は激減。宇宙には平和が訪れているが、人口(?)の80%を占めるAI搭載ロボットが世界を支配している。(面白いのは、このロボットたちは決…

映画にみる、ヨーロッパの”死生観”。「神様メール」&「素敵なサプライズ 〜ブリュッセルの奇妙な代理店〜」

「神様メール」(2015年) 制作国:ベルギー・フランス・ルクセンブルク合作 世の中の嫌なことって、全て一人(?)の意地の悪いゲスな神様のせいなんだよ、だからそいつを排除して、みんな幸せになっちゃおうぜぃ♫っていう、どこかシュールなファンタジー・…

イヂメぬかれるオトコたち。〜映画「ノック・ノック」&「白い肌の異常な夜」〜

「ノック・ノック」(2015年) 映画「ノック・ノック」ショートレビュー 【あらすじ】 愛妻と二人の子供に囲まれ、絵に描いたような平和な家庭生活を送る主人公エヴァン。 休日に家族とビーチへ出かける予定だったが、急に舞い込んだ仕事をこなすため、エヴ…

鉄男 TETSUO(1989年)

この映画は、”サイバーパンク”の系譜に位置づけられる作品だが、他とは一線を画する強烈な個性を放つ。そこには近未来を想起させるようなシャープさやカッコ良さは無い。むしろ、なんかドロドロとした恐ろしさやエロさ、人間の業を具現化したような醜さを表…

笑えて泣けて、あったかい。。映画「アスファルト」について。

「アスファルト」(2015年) 映画『アスファルト』予告編 ”笑い”というのは実に奥深い。意外に、それは”恐怖”や”哀しみ”といった一見異なる感情の機微と表裏一体だから。 本作は、特に独特の”ユーモア(あるいはエスプリ?)”と”哀切感”との取り合わせが極め…

愛すべきジム・ジャームッシュ初期の傑作たち。

ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年) ニューヨーク〜クリーヴランド〜フロリダを舞台にした半ロード・ムービー。博打やイカサマで生計を立てる気ままな青年の二人組、ウィリーとエディ。ある日、母国ハンガリーから渡米してきたウィリーの従妹エヴァ…

ゴジラ今昔物語。

ゴジラ(1954年) これは”怪獣映画”の体をなした、極めてリアルな社会派ドラマだ。核開発など”力の論理による秩序形成”に対し、強い警鐘を鳴らす。 「暴力による問題解決」に向けられた老教授の”憤り”。 ゴジラの容赦なき破壊行為に対する民衆の”怒り”。 純…

ニキータ(1990年)

物語の世界において、なんとも不条理な運命に翻弄され、もがく主人公の有り様は実に切なく哀しく、そして美しいものだ。 この映画の主人公、ニキータと名乗るその少女は、冒頭で情状酌量の余地が無いほどの重大な罪を犯して警察に捕らえられる。それも、はず…

映画「ニュースの真相」で魅せる”レオニダス王”的 心意気。

「ニュースの真相」(2016年) 興奮した!凄い面白い!!もしかしたら、(現時点での)本年マイベストワンかも。 2004年、CBSの番組がブチまけたジョージ・W・ブッシュ米大統領の軍歴詐称(?)疑惑報道。本作は、その”スクープ自体の真偽”が疑惑となってし…

映画とナチス・ドイツ。。

「栄光のランナー 1936ベルリン」(2016年) ナチス政権下のベルリンで開催された1936年のオリンピック。これは、その大会で前人未踏の四冠を果たしたアメリカ代表ランナー、ジェシー・オーエンスの半生を描いた伝記映画だ。 映画『栄光のランナー/1936…

映画「LOVE【3D】」に観る、”愛しさ”と”切なさ”

「LOVE【3D】」(2015年) 映画「LOVE」ショートレビュー 【あらすじ】 主人公”マーフィー”は、妻の”オミ”と未だ幼い息子との三人暮らし。 オミが息子の面倒に明け暮れる日々のためか、夫婦間に流れる倦怠感がマーフィーの心に暗い影を落としている。 元旦…

アイルランド映画における若者たち。

「ブルックリン」(2015年) この映画も、先ずは映像が印象的。40年代〜50年代の”アメリカ製ポスター”から飛び出して来たかのような、パステル調でクラシカルな色彩。衣装も含め、緑と赤を強調した色合いが「アメリ」とかを彷彿とさせる。 内容の方は、、ピ…