微笑ましくも何だか切ない。。過ぎ去りし日の青春物語。〜映画「グッバイ、サマー」〜
「グッバイ、サマー」(2015年)
【映画情報】「グッバイ、サマー」〜広尾のごきげん空模様#79〜
【あらすじ】
14歳の少年ふたりが繰り広げるひと夏の冒険(?)物語。
女の子のような容姿(言いかえれば美少年といえるのでは?服装はいたって男の子)で、クラスメイトからは”ミクロ(チビ?身長が低いわけではない。華奢だから??)”と呼ばれ、からかわれることも多い画家志望のダニエル。彼はクラスメイトの女の子”ローラ”に想いを寄せるが、今ひとつ相手にされていない様子。
そして、ダニエルと同じクラスに入ってきたメカ・オタクで目立ちたがり屋の転校生テオ。
個性的でどこか繊細なふたりは、いつの間にか意気投合し親友に。
父親の骨董品店を手伝うテオは、売れない商品を処分する為に訪れた廃品回収屋で50ccの中古エンジンを見つけ出す。
彼はそのエンジンを修理して自動車を作り、夏休みになったら旅に出ることをダニエルに提案。ふたりは早速準備に取り掛かる。
程なく完成したオリジナル自動車だが、様々な不備の為、公道を走行する為の認可を下ろしてもらえない。一時は、落胆するふたりだが、ダニエルのアイディアにより”家型”車体を製作する。これなら警察に見つかっても、ただの家(小屋)にカモフラージュできる!と考えたのだ。
いよいよ学校は夏休みに入り、ふたりは作戦を決行するが。。
ミシェル・ゴンドリー監督の青春ムービー!映画『グッバイ、サマー』予告編
【みどころ】
まぶしいばかりの青春(プチ)ロード・ムービーだが、結構リアルでビターな展開をみせる物語でもある。後半でダニエルの妄想めいたシーンが出てくるが、それはあくまで彼の頭の中で起きたことであって、突拍子もない荒唐無稽な展開や幻想的なシーンは一切見られない。
個人的に最も印象に残ったシーンは、ダニエルの個展会場(画廊?)で見せる、テオの小芝居的なパフォーマンス。あの年代特有のバイタリティーとか感受性を表現すると同時に、親密になっていく親友同士の関係性の機微が現れていて素晴らしい。
<ダニエルとテオ、正反対とも言える家庭環境の中で、まったく異なる苦悩を抱えるふたり>
ダニエルは母親からの過干渉と重すぎる愛情を負担に感じている。オトナ目線で言えば、溢れんばかりの子供への愛情と気遣いに、”申し分の無い母親”との評価をしてあげたくもなるが、子供にとってはウザく感じられてしまうのだろう。そんな母親は、スピリチュアルな集会にダニエルを連れて参加するなど、なかなかの個性派(笑)。演じるはヒット作「アメリ」で主人公を演じたオドレイ・トトゥ。
一方、テオの方は、(子供としては)全く干渉されない家庭。むしろ家事や、父親の骨董品店での手伝いを”強要”されて、家族としての役割を果たすことだけにしか両親の関心はないのかと思わせるような状況。テオに対する態度もなんだか冷ややか。ただ、母親は体調を崩している様子も見受けられる。時折、彼女が登場するシーンにより、その容態が悪化傾向にあることを仄めかす。
この二つの家庭像は極めて両極端。現実の家庭は、それぞれの状況が混ざり合っていることが多いだろう。それを敢えて、くっきりと象徴的に描くことで”現代の子供たち”を取り巻くやんわりとした苦悩を浮き彫りにしようとしているのではないだろうか。
身体は未成熟でも、精神的にはオトナの入り口に立った”ふたり”の、どこか鬱屈した想いや奔放な行動。そんな彼らの有り様が、いいオトナたるわれわれ観客の”何かこそばゆい部分”を刺激してくる。
そして、あのちょっぴりビターなラスト。多感な子供の目線で描かれているようで、実は、”あのオチを予測できてしまうことが大人になることなのか”と思うと、何とも切ない気分になってくる。
監督・脚本は、「エターナル・サンシャイン」「ムード・インディゴ うたかたの恋」のミシェル・ゴンドリー。
「グッバイ、サマー」
制作年:2015年
制作国:フランス
監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー
上映時間:104分
配給:トランスフォーマー