できれば映画に浸っていたい。。

鑑賞した映画のレビューや解説を勝手気ままに書いていきます。

驚愕のド直球。映画『pk』について


映画『pk』について。広尾のシネマ☆JACK#8

『pk』(2014年)

 監督:ラージクマール・ヒラーニ

 脚本:アビジャート・ジョーシー

    ラージクマール・ヒラーニ

 製作:ビドゥ・ビノード・チョープラー

    ラージクマール・ヒラーニ

 製作国:インド

 配給:REGENTS

 

国内外で大ヒットしたインド映画「きっと、うまくいく」の監督と主演俳優 (アミール・カーン)が再びタッグを組み、前作以上の大ヒットを記録。その後、全米でもロードショーされ、2年の月日を経て”満を持しての”日本公開に至った作品。

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【あらすじ 】

留学先で悲しい失恋を経験し、今は母国インドでテレビレポーターをするジャグーは、ある日地下鉄で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の飾りをつけてチラシを配る奇妙な男を見かける。チラシには「神さまが行方不明」の文字。ネタになると踏んだジャグーは、"PK" と呼ばれるその男を取材することに。「この男はいったい何者?なぜ神様を捜しているの?」しかし、彼女がPKから聞いた話は、にわかには信じられないものだった──。驚くほど世間の常識が一切通用しないPKの純粋な問いかけは、やがて大きな論争を巻き起こし始める──。

<※「pk」公式HPより抜粋>

 

映画『PK』日本版予告

 

【感想・解説・あらすじ】

私は鑑賞前、予告編や宣伝ポスターなど見るなどして<pk>と呼ばれる主人公に対して”ある先入観”を抱いていた。様々な宗教の装飾を身につけて奇行を繰り返す謎の人物。彼の不可解な行動の秘密が”少しずつ明かされる”に伴い、観るものに感動を与えていく、、といった感じだ。

 

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 ところが、劇場に足を運び本編が始まるとびっくり仰天。謎どころか、主人公の素性はいきなり明かされる。いや。明かされる以前に、最初から謎でもなんでもない。これには流石に拍子抜けした。いや、だったらこの先どうやって物語を進行させていくのだろう??かと。

この驚きのオープニングに象徴されるかのように、本作の物語展開はどこを取り上げても”ド直球”。捻りが一切ないのだ(笑)。歌に例えれば、ビブラートを一切使わない<玉置浩二>の歌いっぷりのよう。安全地帯の歌に魅了されてしまうように、捻りの全くない本作の物語世界にいつの間にやらハマってしまう。

 

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実はさらにもう一つ、私は本作に対しての先入観を持っていた。観る前からではない。本編の冒頭に表示されたテロップを見てからだ。正確な文言は憶えていないが、要するに「この映画はフィクションであり、いかなる神や宗教団体も傷つけたり揶揄する意図は全くありません、、」といったような意味のことだ。

これを見て、私はこう思ったのだ。「あぁ、この映画に出てくる宗教や神(偶像)は、アクセサリーや調度品のようなディテールであって、物語自体が宗教に言及するものではないのだろう」と。

 

しかしストーリーが進行していくに伴い、驚いたことに私のこの認識は単なる”思い込み”であることが解ってくる。ディテールどころか、現代における”神”及び”宗教”の有り様に対して痛烈な風刺(というか批判)を込めたメッセージをストレートに発しているのだ。まさに”ド直球”。凄い。なんで、こんな映画の企画が通るのか(いい意味での疑問)。そして”こんな映画”が世界中で公開されている現実に感動してしまう。世の中は未だ未だ捨てたもんじゃあないよ、と。

 

直球なだけではない。それは問題提起にとどまらず、具体的な解決策を提示していること。特に欧州には同様のテーマを持った映画は多いが、本作の示す提案は実に本質的。

問題の根本を突いていて対症療法の域に留まらないのだ。

 

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しかもインド娯楽映画のお約束、インド系音楽のミュージカルはしっかり盛り込んでいる。つまり全体に明るく楽観的な空気を醸しつつ、このストレートなテーマから一切逃げずに、それこそ”直球”をガシガシ投げ続けてくる。

 

正直言うと、”中盤あたりで”このインド式演出とあまりに浮世離れした主人公のキャラに、少々胸焼けがしてきた。ところが、本作のテーマと主人公の動きがシリアスに繋がり始める後半あたりから、また再び時間を忘れて本作の物語世界に没入してしまったのである。

 

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人間は思い込みの動物。

それを一切顧みることがないと、きっと哀しく不幸な出来事が起きるのだろう。

この映画は、神を否定しているわけではない。”創造主”としての神はむしろ積極的に肯定している。但し、周りの動向や吹聴に左右されることなく、自らの”フラットな”価値判断によって物事を取捨選択していく必要性を説いているのではないだろうか。

 

さらには昨今、世界中で見え隠れする”政治的な動き”への”警鐘”といった意味合いも含んでいる、、と考えるのは深読みが過ぎるだろうか。  

とりわけ大衆への迎合から、ともすれば極度の保護主義に走りかねない政治家たちの台頭などに対して。

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