できれば映画に浸っていたい。。

鑑賞した映画のレビューや解説を勝手気ままに書いていきます。

鉄男 TETSUO(1989年)

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この映画は、”サイバーパンク”の系譜に位置づけられる作品だが、他とは一線を画する強烈な個性を放つ。そこには近未来を想起させるようなシャープさやカッコ良さは無い。むしろ、なんかドロドロとした恐ろしさやエロさ、人間の業を具現化したような醜さを表出していると言える。

 

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主人公は”ある出来事”をきっかけに肉体が金属化していくのだが、これが、単なる金属化ではない。まるで打ち捨てられた工業製品=スクラッップのごとき造形の金属が瘤のようにゴボゴボと肉体から湧き出て侵食していく感じなのだ。

 

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  また、オープンニングのタイトルバックで表示される”普通サイズの怪人シリーズ”との文字が、なんだかウルトラQなんかを見てるようなワクワク感を奮い起こす。かといって決して子供向けでは無い、白黒じゃなかったら結構ヤバいんじゃ無いかってくらいグロいしエロいのだ。

 


TETSUO: THE IRON MAN (1989) HD

 

映像としては、”かかと”からのジェット噴射移動のシーンなど、ストップモーション・アニメを多用したアナログチックな特殊効果が、一層この映画に際立った個性を与えている。サイレント映画では無いが、終始、セリフは最低限に抑えられており、映像と音楽の絡み(特に鉄人化が進行していくクダリなど)も見事。日本語が解らない外国人から見れば、音楽PVにも見えるのではないだろうか。 

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とはいえ、物語性を排しているいるわけではないのも面白い。不条理さや不可解さはあるものの、しっかりと登場人物同士の絡みが存在するし、その感情のぶつかり合いから生まれる”パワー”こそが、この映画最大の魅力ではないだろうか。

クライマックス、対峙する”男”と”やつ”からほとばしるエネルギーに圧倒される。彼らは決して”潰し合い”の闘いをしているわけではない。じゃれあい、愛し合いながら”同化する術”を探り合っているのだ。